今日のいわゆる高度情報化社会への移行に伴い、地域住民の社会関係の様式も各地で大きく変化していることが認められる。地域言語の運用規準においてもまたしかりである。 本研究ではこの側面を検証することを目的に、そのモデルケースとして、最近の社会的変容が特に著しい、北陸、富山県西南部地域をサンプルに、敬語を中心とする表現形式の具体的な様相とその変容のプロセスを社会言語学的なフィールドワークによって追究しようとした。 このたびの補助金を受けた期間に得られた成果は、次のようである。 1.日本におけるこの分野での総合的な研究文献リストを作成し、公刊した。 2.言語使用の変遷をとらえるための事例研究として、対象地を、富山県の西南地域(越中五箇山郷)に指定し、この地域社会で生育した一人の個人(1924年生まれ・女性)の幼年期におけるイディオレクトの一部(「用」の部)を完全記述し、『越中五箇山方言語彙』(「状態・存在に関することば」および「行為・行動に関することば」)を公刊した。 3.敬語行動の実態を把握するために、越中五箇山郷(富山県東砺波郡上平村楮集落)において、各場面設定のもとに、現代高年層数名の談話を収録、文字化資料を作成した。 4.とりあえず(1)(2)をまとめて、このたびの研究成果の報告書とし出版した。
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