『萬葉集』の原本の姿を推定し復元するための本文校訂は『萬葉集』研究の基礎をなす研究といえる。また、漢字で表記された本文をいかに訓読すべきかを追究する訓読の作業も並行して行わなければならない重要な基礎研究である。 本研究は、以上のような考え方に基づき、『萬葉集』の本文の校勘、校訂に取り組み、かつ従来提出されている訓(異訓)を調査・検討し、『萬葉集』成立当時(8世紀)の本文と訓とを可能なかぎり明らかにすることを目的として行われた。 この目的を達成するため、まず昭和62年度は、『萬葉集』本文に関する刊本・写本(未刊のものは写真等による)、注釈書類の収集につとめるとともに、それと並行して、『萬葉集』巻1から巻8までの本文校勘と校訂、異訓の集録と検討を行った。第2年次にあたる昭和63年度は、同じく巻9から巻12までの本文校勘と校訂、異訓の集録と検討を、また第3年次にあたる平成元年は、同じく巻13から巻20までの本文の校勘と校訂、異訓の集録と検討を行ってきた。 今年度末(平成2年3月)に印刷する『研究成果報告書』は、その研究成果として、漢字で表記された『萬葉集』の中の和歌4516首のうち、従来から問題にされてきた歌句について、可能なかぎり穏当と思われる本文とその訓読法(訓)を提示することにつとめたものである。
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