研究課題/領域番号 |
62510234
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
小池 正胤 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (00019316)
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研究分担者 |
三好 修一郎 仁愛女子短期大学, 国文科, 助教授 (40157699)
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キーワード | 草双紙 / 赤本 / 青本 / 黒本 / 黄表紙 / 合巻 / 豆本 / 昔話 / 児童 / 絵本 / 江戸時代 / 浄瑠璃 / 古浄瑠璃 |
研究概要 |
本年度の研究は昭和62年度に引き続いて各公共図書館・大学図書館収蔵の黒本・青本を中心とした草双紙を調査し、これを複写してその内容を分析検討する作業を行った。すでに昭和60年度から科学研究費による報告書を年度毎に作成してきたが、これは代表者の研究室で昭和53年度から毎年発行して来た研究誌「叢」に続くもので、内外から高い評価を与えられてきたものであった。研究費の助成によって一層内容が充実しさらに高い評価を得ることになった。本年度もひきつづいて昭和63年度報告書「江戸時代の児童絵本の調査分析と現代の教育的意義の関連の研究」をまとめた。本年度は作品分析をさらに立体的に行った結果、たとえば報告書冒頭の「『日本蓬艾始』について」では現在その内容が不明になっている二代目市川団十郎の「艾売り」の台詞の一部が明らかになった。これは当時の児童が好んで口にしたため評判になったという事実があるので児童の好尚をも明らかにすることになったといえる。また樊噌を主人公とし、日本に渡来したとする構成も日中の文化的交渉の底辺をも示す資料となりえているのである。また「豆本『桃太郎宝蔵入』について」では、草双紙の一範疇である豆本における昔話の実体、という新しい研究分野を提示することになった。このほか「『武者鑑』について」は中世以来の民俗信仰の一例である「絵馬」が草双紙にどのようにとり入れられたかを多くの資料をもとに論証することができた。このように文化史的な面をも黒本・青本の調査分析は解明している。黒本・青本のもつきわめて多角的意義を本研究は次々に明らかにしており、所期の目的以上の成果をあげえた、と判断している。なお報告書は国内はもちろん欧米の図書館機関からも送付を求められており、本研究が世界的な関心をもたれていることがわかる。なお資料は膨大に残されており、研究は継続されることが各方面から期待されている。
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