研究概要 |
わが国において, 仏教伝来の最初期から重視された法華経は, 平安時代を通じて特に重んぜられ, 「法華経信仰」と称される信仰形態を確立し, 多くの宗派をも生んだ. 本研究は, その展開の様相を, 仏教典礼(法要)の勤修形態を通してあとづけようとするものである. 今年度は, 当初の研究計画に基づきつつ, 下記の調査および研究を実施した. 1.法華経に依拠する修行法と, しの関連法要形式の調査研究 2.法華経の教理探求を目的とする法要諸形式の調査研究 3.史料に基づく, 平安時代法華経信仰の把握 上記1.に関しては, 葛川明王院の法華懺法, 三千院の御懺法講, 毛越寺修正会の常行三昧, 毛越寺・中尊寺・若松寺の悔過法要の実施調査を行い, また東海地方における悔過法要残存の有無の確認調査を行った. また上記2に関しては, 延暦寺法華大会における堅義論議と法華十講の実施調査を行った. 上記3に関しては, 内裏式, 延喜式, 小野宮年中行事, 九条年中行事, 西宮記, 江家次第, 師光年中行事, 師元年中行事, 師遠年中行事等, 公司史料を主とする諸史料から催行行事とその実態を抽出し, 行事の変遷を確認しつつある. 法華経信仰の展開過程は広く深く及んで短期間に把握し得るものではないが, 限定的な把握を確実に行い, 少しずつ成果を積み上げる方針で, 研究代表者・研究分担者とともに, 調査研究の成果の一部を後記のごとく公表する予定である.
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