本研究の出発点となるラスキン美学そのものの解明に責された初年度(62年度)を受けて、当該年度は、当初、その基礎研究を継続しながら、ラスキン美学とラスキン時代の絵画の動向、また、それとの関係において、たとえば具体的にどのような絵画や画家を強く推したか、の解明を通して、ラスキン美学の実際の姿、あるいはまた、同時代的な状況でのあり方を把握することにつとめた。一方、ForsClavigeraなどを資料として、ラスキンが今日いうところのいわゆる公害問題を積極的に取り上げ、究明あるいは追及しようとしていたことなどに象徴される。同時代での社会・経済構造を論ずるラスキンと、ラスキン美学との接合点を求めた。(ラスキンは、lifeに必須のものとして6つをあげ、そのうちmaterialなものに関しては産業汚染が進んでいることを指摘し、汚染から守る学問としてのPoliticalEconomyを説いた。この6つとは、まずmaterialなものは、(1)PureAir、(2)PureWater、(3)PureEarthであり、immaterialなものとしては(1)Admiration、(2)Hope、(3)Loveである。この、materialなものとimmaterialなものとのかかわりに、ラスキンの美学と社会思想のかかわりが象徴されている、といえる。)本研究にとってのこの最終目標は、まだ完全には達成されていないが、要するに、ラスキン美学の中核として精神主義と主題重視をおさえることによって、かなりこのあたりの状況が判明するという見通しがついた。
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