研究概要 |
昭和六十二年度の計画調書に記した如く, 本研究の中心テーマとなる古写本研究は約100年前のものが唯一の学術調査である. 其の後に生じた変化, 即ち新しい古写本の発見とこの100年間に行方不明となっているものの確認, 再発掘等に関しての研究はほとんどなされていないのが実状である. 特に近年の新発見断片写本(我々日本人研究者の手によりものも含む)の国際学会への報告が相つぐなかで, 過去100年の古写本研究に関する整理, 分類が急務となっている. 古写本の大半がヨーロッパの国公立図書館の所蔵となっているため, 地理的制約を受けることは止むを得ないが, 幸い国際学会出張の機会を利用して, 着々資料の蒐集をはかっている. 非常に対象とするべき問題が多岐に亘るテーマであるため-同時に新発見等による資料が登場する可能性がたかく流動的でもあり-今年度は当課題の総論に相当する序論を紀要に掲載している. 同時に特定の写本そのものに関する具体的調査の報告も併行して行なっているし, 我々日本人研究者の手になる断片写本の発見に関する報告も国際学会の機関誌及び世界的に権威のある研究誌への論文提出を完了している. その他にもベルギー, ルーヴァン・カトリック大学のファン・ホーケ教授(中世ブルゴーニュ公国の図書館研究に関する世界的権威)の指導を得た, 紛失古写本に関する調査報告も可能なのであるが, 今年度は掲載誌が見つからないので来年の報告にまわさざるを得ない. 以上のような研究報告への反響や批判を吟味した上で次年度の研究方針の再調整を行うつもりである.
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