研究概要 |
1.現地調査で得たマル=ラシ=アツイ諸語およびビルマ語諸方言の言語資料を『基礎語彙調査表(第三次)』(東京大学言語学研究室,1953)の項目を目安としてカードに整理分類した. 2.いままでに公刊された内外の論文・資料を蒐集整理しその資料的価値を吟味した. 資料の大部分は英領時代のビルマと最近の中国のもので, 資料的価値は質量ともに後者が高いことは否めないが, 前者もビルマ領内の当該諸言語の実態を知る上で不可欠なものであることがわかった. また, 現地調査の資料の不備により不明確であった点を中国で公刊された資料からの推論により補正し語彙体系・文法体系の記述の一部を明確にしえた(しかし, これについては方言的差異も考えられるので体系の整合性を考慮して判断しなければならない). 3.現地調査において上記言語調査表の各項目に付し媒介語として使用したビルマ語の単語の意味領域の分析の確認と再検討をインフオーマントの協力を得て行なった. その結果, 媒介言語と調査言語の対応する単語の意味領域のちがいを推論できたものがあり調査した言語と媒介言語ビルマ語との間の語彙体系・文法体系の異同を, 部分的ではあるが, 明確にしえた. 以上の作業の成果をもとに, 今後, ビルマ語系(Burmish)諸言語における同源形式(cognate)のセットを抽出してゆく. さらに, 共通の同源形成をもたずそれぞれちがった祖形(proto-form)に来源するものについては, ロロ=ビルマ祖語(PLB), チベット=ビルマ祖語(PTB)の祖形との関連を推定しつつ, より上位の同源形式のセットを探ってゆく.
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