1.当該年度における研究取りまとめの一環として、本研究課題の観点から、社会主義法なかんずくソビエト法研究に関する方法論的提言を1988年度比較法学会で行った(その報告要旨は別記論文「社会主義法の比較文化史的考察について」)。この提言の主旨は、社会主義法なかんずくソビエト法は、資本主義法-社会主義法といういわば歴史類型的なタテ軸だけでなく、社会史の方法にもとづく比較文化論的なヨコ軸の観点からも考察されるべきであって、この観点からすれば、ソビエト法は、しばしば西欧法(とくに大陸法)の系譜に連なるものとして論じられるのとは異なり、むしろ「アジア的」な法類型に属するものと見るべきである、という点にある。 2.上述の方法論的観点から、1918年憲法から現行1977年憲法に至るソビエト憲法史を、既存の多くの研究のように憲法理論史としてではなく、社会史(構造史)の観点から再検討し、スターリン政治体制とスターリン憲法の特殊な対応関係、そしてまたペレストロイカの必然性とその歴史的意味を、ソビエト社会の発展に則して歴史的に明らかにすることを試みた。(その成果として、論文「社会主義憲法史序説」、『講座・憲法学の基礎』第5巻所収) 3.同じ方法論的視角から、現代中国法および現代日本法を研究する際の、当該社会のゾツィアールな構造の特質に着目した、西欧法-アジア法という比較文化史的・類型論的な考察の意義についても、独自の提言を行った(論文 「社会主義法における『アジア的なもの』を考える」および「ペレストロイカの法と現代日本法」)。
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