研究概要 |
社会主義における「人民代表制」は, その憲法上の規定にもかかわらず, 形骸化している. 党二国家体制ともいうべき党機関と行政機関との癒着による政治支配の構造は, 当の社会主義諸国においても近年克服の対象として議論されはじめた. 歴史的構造の分析を踏まえて, 社会主義における「人民代表制」の横断的研究を進める格好の時期といえよう. この課題にとって, 従来はブルジョア議会制がもっぱら批判・克服の対象とされ, 継承の問題として議論されなかったのはなぜかの解明が不可欠である. 今年は, 帝政期の議会の資料を集め, ソビエト政権が克服の対象としたものの分析に着手したが, なお資料の読解・検討中である. 社会主義諸国を多様化しているのであって, 比較憲法的分析も重要である. 今年は, ペレストロイカの進行過程で注目された「地方ソビエト」の「複数選挙」の実験をフォローしてまとめた(『ペレストロイカ』に所収). またユーゴスラビアでも「政治改革」「憲法改正」が日程にのぼっている. 社会主義における「複数主義」は, 「人民代表制」にとっても大きな意味をもつ. こうした過程については紹介的にまとめておいた. この両国において共通して議論されているのが「自主管理」の問題である. 生活者としての勤労人民が, 労働の場と消費の場の双方で真にその管理の主体として登場しうる, そのような社会構造を求める人類史は運動はまだほんの出発点にあることが改めて確認された. 次年度は, 引き続き比較研究を進めつつ, 歴史研究に見るべき成果を出すことが要請されよう.
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