研究概要 |
今年度は, 1789年ドーフィネ州三部会常任委員会のアンケート(以下アンケートと略す)のデータ処理と, 地形図(フランス南東部)の三次元グラフィック化を主たる目標としてきた. この結果, 次の如く研究上の実績をあげることができた. 1.約300自治体のアンケート回答のうち, 6項目(医者, 助産婦, 獣医, 建築材料, 年市・市, 不作時の穀物の求め先)に関する集中度, 従属度をとった. その結果, 急峻な山岳地帯の住民は単一の相手方に集中し, またその不足を他に従属して充足している割合が高いことが判明した. これにより, 18世紀の地方住民は閉鎖的ではなく, よりコミュニケーション網が広いことが推測できる. 副次的であるがこの時代の地図を様々な史料に基ずき作製してみると, 王政の側が把握していた道路よりもはるかに多様な民衆のコミュニケーション網が存在していたことも明らかになった. 2.フランス南東部の地形図をコンピューターによって三次元グラフィックにすることに成功した. 但し, 1で述べたアンケート回答から得られたコミュニケーション網地図は模式的であり, 両者を結合するに至っていない. この点は来年度の課題である.
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