今年度は、前年度に引き続き、1789年フランス・ドーフィネ州三部会常任委員会が実施したアンケート調査(以下アンケートと略す)に対する340自治体からの回答のデータ分析と、そのグラフィック化に努めてきた。その結果は次の通りである。 1.上記アンケート回答のうちの6項目(医者・助産婦・獣医・瓦・定期市・不作時の穀物の求め先)に関するデータベースを構築した。つまり、340自治体が上記6項目を充足できない時の行き先に関するデータベースである。 2.三次元グラフィックソフトを用いてドーフィネ地方の立体地形図を作り、そこに上記6項目の充足のためのルート網をかぶせようとしたが、縮尺、ソフトの問題が生じ、成功に至らなかった。 3.2の不成功に鑑み、1のデータベースを活用して、コミュニケーション網の構造解析に転じた。ISM法などのシステム工学の方法を用いて、模式的にコミュニケーションの構造(末端の村落ー中心都市はどのような構造で結ばれているか)を確定しつつある。 本年度の作業、研究を通じて次のような知見を得た。 1.1789年春の段階で、山岳地帯でも平野部でもかなり複雑かつ綿密なコミュニケーション網ができあがっていた。 2.特に穀物、定期市、医者に関しては、レヴェルが4(つまり末端から数えて4つ上のセンター都市)上まででかけており、その構造も密である。 3.助産婦については地図で把握できる通り、いずれの地域も分散的である。瓦は地域偏侵が高い(産地が限定されている)。 4.各パートを構成する共通の性質については、地図と対照しながら検討中である。
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