本研究は、18世紀末のフランス南東部におけるコミュニケ-ション網の有様(分布・構造)を把握することを目的としていた。具体的には、1789年、ド-フィネ地方で実施されたアンケ-ト調査に対する340自治体の回答から(1)コミュニケ-ションに関するデ-タを抽出し地図化すること、(2)コミュニケ-ションのデ-タをデ-タベ-ス化すること、(3)三次元グラフィックによって描かれたコミュニケ-ション網の地図を作製すること、を目標としていた。 2年間にわたる作業、研究の結果、上記のうち(1)、(2)については達成できた。(1)についてはアナログ地図ができ、(2)については、他のデ-タも処理可能なデ-タベ-スを構築できた。ただし(3)については、アプリケ-ションソフトが不十分なため完成できずに終った。さらにアナログ的表示の限界(コミュニケ-ションの有無の識別はできても、方向、構造が不明)に気づき、(2)を利用して、システム工学を応用し構造モデル分析に転じた。その結果、次のような新知見を得た。 1.フランス南東部は、山岳地帯、平野部ともに発達した構造のコミュニケ-ション網を有している。アンケ-ト中、穀物、定期市、医者を求めるコミュニケ-ション網は濃密であり、それぞれ中央都市をめがけて最大40km、4レヴェル先まで人々は移動している。 2.中央都市は、山岳地帯で中・南部に、平野部ではロ-ヌ河沿に分布している。この地方都市の役割は重要で、フランス革命の変動の中でも大きな役割を果している。(大恐怖、連盟祭など) 3.各地方都市を頂点とするネットワ-クのグル-プが検出できたのでその性質の比較が可能になった。
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