本年度は3年間の継続研究の最経年度にあたり、まとめの努力をした。研究の当初に予測していたものとくらべて、研究の課題のひろがりと深さにおいて、はるかに大きいものであることがわかり、研究課題としてさらに拡大し、今後も継続する必要性を確信した。 1 文献目録の整理を行った。この10年間(1980〜1990)に欧米を中心にして、本研究課題と関連をもつ研究がぼう大に蓄積されていること、しかしこの蓄積は、かならずしも有機的関連をもたないで存在していること、にもかかわらず、従来の研究のパラダイム転換の大きなエネルギ-となりつつあることが明らかになった。 2 こうした労働史研究(社会科学研究といいかえてもよい)のパラダイム転換に、本課題研究はもうすこし視野を拡げて継続することで、一つの力となりうることがわかった。 3 当初の予測からのあらたなひろがりは、次の諸点が明らかである。(a)セクシズムとフェミニズムの問題は、「労働」をキイワ-ドにして、レイシズムと反レイシズムの問題と深くつなっがていること。(b)セクシズムとフェミニズムの問題は、「労働」をめぐる「性別役割分業」という観点からみると、「家族」というキイワ-ドがきわめて重要ないみをもっていること。(c)イギリス労働史上におけるセクシズムとレイシズムの問題は、「労働力」の移動(マイグレ-ション)の問題として一つにまとめて理解する必要があること、(d)したがってこの研究は、「家族」という小宇宙から、植民地をともなう帝国主義的な世界資本主義という大宇宙にいたる全体構造を、セクシズムとレイシズムを手がかりに、統一的に把握するパラダイムをもつ必要があるということ、などである。 3.19世紀イギリス労働史における3つの時代(チャ-ティズム、トレ-ドユンオニズム、社会主義の復活)の特徴を、上の視点で分析した。
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