本年度は3年間の継続研究の最終年度にあたり、まとめのための努力をした。その結果は、研究当初の予測した状況とくらべて本研究課題ははるかに大きなひろがりをもつものであることがわかり、さらに今後の継続的、かつ組織的な研究が必要であることがわかった。当面、明らかになったことを以下にまとめておく。 1.文献目録を整理するなかで、この10年間に欧米を中心にして、本研究課題に関連する研究がぼう大にだされていること、しかもこれらの研究はまだ十分に有機的な関連づけが行われておらず、理論化も十分でないことがわかった。 2.これまでのイギリス労働史研究におけるパラダイム転換がおきていること、この転換の動きの中で、本研究課題は、この転換を一層おしすすめるものであることがわかった。 3.あらたな広がりをもって展望される研究は、(1)「労働」を中心的なキイワ-ドとして、「セクシズム」と「フェミニズム」は人種の問題とつながらなければならないこと、(2) 「セクシズム」と「フェミニズム」は、やはり「労働」をキイワ-ドとして、性別役割分業構造の問題、とりわけ「家族」の問題とつながること、(3) 他方でこの「セクシズム」と「レイシズム」は、「労働力」の移動の問題ときりはなしがたく、この「労働力」移動をキイワ-ドにして、問題の視野は、国際的な資本主義分業と資本蓄積体制にまでひろがること、(4) したがって本研究は、19世紀イギリス労働史の世界が、「家族」という小宇宙から帝国主義的植民地体制という世界資本主義の大宇宙にまでひろがる世界を統一的・構造的にとらえる必要があることがわかった。この理論的枠組みの検討とあるていどの構造把握が可能であったことが、成果である。
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