本研究では、カールソン=パーキン法(CP法)の考え方を利用して、日銀「短期経済観測」(短観)に代表される判断項目(定性的)データの指数化の理論を確立した。そしてその方法に基づいて製造業の判断14項目により景気分析を行った。また業種別景気分析も行った。 CP法はインフレ率等直接観察可能な変数の集団的予想値を得る方法であるが、この研究では観察不能な潜在的変数(たとえば景気)の指数化を狙い、その潜在的変数の一意的識別可能性を与える理論を確立した。たとえば、日銀「短観」業況判断データでは、その業況変数が一意的に識別され、その変数の個人(企業)についての分布として正規分布を仮定した基準正規CP指数では、これまでの日銀DI(ディフュージョン・インデックス)と比べて、単に浸透度のみならず景気の量的拡大を表す指標として機能することを示した。さらDIに対して理論的基礎を与え、それは基準化一様CP指数であることを示した。 次に、製造業14判断項について基準化正規CP指数で指数化し、MTVモデル分析を景気指数を作製した。標本期間は74Q2〜87Q2であり、この指数によると「景気」は86Q3に「底」を打つたあと、分析期間の最後の87Q2では回復がはっきりしている。他方、企業の流動的ポジションを表わす指数も求めている。 さらに、業況判断基準化正規CP指数を景気の代理変数と考えて、19業種の指数にMTV分析を行った。
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