社会調査における自由回答の分析手法としては、従来から用いられてきたKJ法や、KJ法の発想法を取り入れたキ-・ワ-ド抽出法がある。すでに、大型汎用コンピュ-タ用デ-タ・テ-プに収められた、キ-・ワ-ド抽出方式による意識調査「長野県の郷土と文化」(昭和61年5月実施)について、われわれの分析手法を数量化III類について実施を試みた。結果としては、同調査のほかの質問項目の分析結果と極めて合致しており、信頼性を有するとの感触を得た。この点については、62年度、特に「教育意識」に関連した質問項目に対する多次元尺度解析による分析についても、結果的にある程度整合性が得られたものであった。したがって、関連分析の統計手法としては、林の数量化III類に加え、多次元尺度解析法(MDA)も考察できるようになり、手法の拡がりを増すことになった。 しかし、結果の解釈に若干の不安定さが残っているため、インタビュ-方式によりその背景を探る面接調査を実施すると共に、新しいデ-タを得るために、前回と同一の質問文による郵送調査を実施した。心配した、時間の経過のずれによる変化はそれほど大きくなく、一方、地元有識者との面接調査はきわめて有効で、結果の解釈に対する大きな指針を与えてくれた。最終面接調査が終了したのは平成元年2月末日となってしまったため、本手法の有効性、信頼性について総合的に論ずる研究成果報告書の完成は、少し先に延ばさざるを得ないことになった。その後、郵送調査のデ-タの基本集計を研究成果報告書にまとめると共に、「社会調査技法論III調査票」の中で現在まで得られた知見や、基本的な考え方を述べ、更に研究を継続する予定である。
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