研究概要 |
多重線型回帰式において, 回帰係数行列に何らかの非線型制約が含まれると, 推定は最尤推定アルゴリズムで行なわれることが多い. 他方非制型制約を無視した推定は最小2乗法で行なわれるが, 非線型制約そのものの統計的検定は最尤推定結果から得られた誤差共分散行列と, 最小2乗推定の結果から得られた誤差共分散行列をもって行なわれる. いわゆる尤度比検定統計量である. 我々はまずこの検定統計量の分布の漸近展開を導出した. 次に尤度比検定統計量と並んで頻繁に利用されるラグランジュ乗数検定統計量についても, 尤度比検定統計量と同様に分布の大標本漸近展開が導出された. 以上の二結果は非常に一般的な結果である. その具体的な内容を見るために以上の二結果を比較的単純なモデルに適応することも考えられた. その第一は単純な線型回帰式における係数の非線型制約である. 第二は連立方程式モデルにおける識別制約である. この制約が線型回帰式における係数の非線型制約に表現できることも我々が明らかにしたのだか, この結果によって従来の連立方程式モデルにおける様々な検定を統一的に理解することもできた. さらに, マランボーなどが提案するモデルの妥当性に関する検定統計量も, ラグランジュ乗数検定統計量のある種の変形として理解できることも示した. さらにマランボー検定統計量と, 尤度比およびラグランジュ乗数検定統計量の大小関係を数値的はなく質的に示すことができた.
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