完全情報最尤法は、完全体系(全システム)推定量の中でもっとも有効な推定量であることが知られている。しかしながらその計算法はかなり複雑であり、非線型関数の収束計算を含むため実用には供していないのが現状である。 私どもは当研究プロジェクトによって、理論的にはもっともすぐれている完全情報最尤推定量と、理論的に非常によく似た性質をもつ修正三段階最小2乗推定量を開発するに至った。この修正三段階最小2乗推定量は次のような性質をもつ。 1)通常の三段階最小2乗推定量を、ある意味でもう一回くり返すといった計算内容しかもたないため計算が簡単である。 2)漸近展開の意味で、三次の項O(〓)まで、修正三階推定量は完全情報最尤推定量と同じ分布をもつ。 3)完全情報最尤推定量は厳密なモーメント(期待値と分散)をもたないが、修正三段階最小2乗推定量は整数次の厳密なモーメントをもつ。 4)修正三段階法の特殊ケースとして修正2段階最小2乗推定量が定義できる。この修正2段階最小2乗推定量は、制限情報最尤推定量と同じ漸近展開をもつ。 これらの結果は従来全く考えられていなかったもので、完全情報最尤推定量の代わりに修正三段階最小2乗推定量が利用され始まるのも近い将来のことであろう。
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