研究概要 |
1.従来行われているステレオロジー的手法は, 標本中に散布する対象(細胞や金属粒子など, 以下では「粒子」と総称する)単体の統計形態的特徴, すなわち大きさや形, 向きの分布を取り扱うものであった. しかし, 細胞組織の構造・機能や, 金属組織の物性には, 粒子同士が互いに空間的にどの様に分布しているかの情報が重要な役割を果していると考えられ, この情報を得るためのステレオロジーの研究が従来欠けていたと思われる. 本研究では粒子間の相関に関する情報を得るためのステレオロジーの構築を目指した. 2.昭和62年度は以下のような研究経過であった. :(1.)種々のパラメータに対する三次元点配置を計算機シミュレーションによって生成した. (2.)シミュレーションで生成した三次元粒子配置に対して, ランダムに設定した薄断面に交差する粒子の配置データを集積し, それに基づいて三次元の動径分布関数と薄断面の動径分布関数との経験的関係を種々のパラメータに対して求めた. (3.)パーソナル・コンピュータによる画像処理のためのソフトウェアの開発に着手した. (4.)剛体球系の動径分布関数に対するステレオロジー的理論を打ち立て, シミュレーションの結果によってその正当性を確認する作業を, 国際共同研究としてほぼ完成し, 論文発表の準備を行なった. (5.)我々がすでに開発した平面上の相互作用ポテンシャル推定法を, 薄断面に交差する粒子配置に適用して, 三次元における粒子間ポテンシャルと, 断面における推定されたポテンシャルとの関係を調べた. (6.)結果の一部をフランス国で開催された第7回国際ステレオロジー会議にて発表した. (7.)空間におけるランダム充填・ランダム分割と空間の次元との関係についてステレオロジー的興味から解明し, 一定の成果を得た.
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