研究概要 |
本年は二つの方向から国際投融資問題について分析し, かつ成果を公表した. 一つは, 円高と貿易摩擦の相乗作用のもとで急速に進展した日本とアジアNICs及びアセアンとの間の国際的産業の再編成について, 投資と貿易の融合という新しい現象との関連で成果をまとめた. 投資と貿易の融合化現象は, (1)少数支配型合弁, 委託生産など投資の非出資形態化と(2)プロジェクト・ファイナンス, 国際リース, 生産分与など貿易金融の出資形態化という二重の姿で現れている. 論文「海外生産拠点の設立と投資の新形態」及び共著書『現代の貿易取引と金融-貿易金融イノベーションの時代』では, これら二つの投資と貿易の融合形態が, どのような背景のもとで出現し, 直接投資の概念, 貿易保険制度を変容させたか, また日本企業の多国籍化とともに急速に進行している海外金融子会社の設立と国際的資金フローメカニズムについて分析した. その際とくに現今の円高と貿易摩擦がもつ相乗的インパクトと日本とアジアとの間の国際的産業編成について留意した. 二つは, 金融の国際的統合化について論文「金融・資本の自由化と日米経済関係」で理論的かつ実証的に分析した. とくに過剰流動性と現代資本市場, 金融自由化と市場規制, 国際金融に関する政策的協調について検討した. 貿易・投資と国際金融市場の新しい役割について, 同上共著書の第5章「国際金融市場とリスク・ヘッジ法の新展開-間接的金融手法から直接的金融手法へ」で個別企業の為替リスク回避手段に焦点を当てて整理した. 本年は, 上述のように, 研究の基本的方向づけができたので, 次年度以降テーマに沿って掘り下げていきたい.
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