本年はアジアとりわけアセアン進出企業(製造業)及び金融機関でインタビューをし、個別企業の視点でアジアとりわけアセアン諸国と日本との産業的連関について分析をすすめた。このインタビューをもとに現地進出企業の態様の変化、つまり現地市場を基盤とした企業進出から第三国向輸出、日本への製品輸入を目的とした生産活動に転換する過程で発生した投融資問題について解明した。これは理論的な整理として「実質的経営支配と投資の新形態ーー日本企業によるアジア生産拠点の設立と関連してーー」(『世界経済評論』1989年2月号・3月号)で公表している。 本年度の研究における今一つの柱は、アジアとりわけアセアン諸国の金融市場並びにそれら金融市場と日本の投融資活動との関連について分析することであった。個別金融市場の分析については次年度に繰り越されるが、本年は東京オフショア市場・シンガポール金融市場・アセアン(とくにタイ・マレーシア)金融市場の相関性について研究をすすめた。 金融市場が日本・シンガポール・アセアンという連関性をもって、急成長している背景には、断るまでもなく日本企業のアセアン投資の急増と国際的な産業の再編問題がある。論文「日本の直接投資とアジアの産業的・金融的連関ーーASEAN向投資の特性と関連してーー」は、そのような視角からの分析である。 以上の実績をふまえ、次年度には、本研究テーマに沿って研究成果を公表したい。
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