研究概要 |
日本の投融資がアジアNIEsからアセアンへとシフトするなかで、アジア経済に新しい動きが顕在化してきた。アジア経済圏ともいうべき生産、物流、金融の諸分野にみられる。しかし特徴的なことは、このような経済のアジア化現象が、日本を中心とした先進国、アジアNIEsのアセアン投資を通じ、アセアン諸国(とくにタイ、マレ-シア)の「国民経済」的成長を伴って現われていることは注目に値する。 本研究では上述の現象-アセアンを含むアジア諸国の「国民経経」的成長とアジア経済圏の形成という-見矛盾すると思われる現象-について、日本によるアセアン直接投資と融資、援助が投資受入国の経済発展にどのようなインパクトを与えているか分析した。その際のポイントの一つは、前近代的な金融市場を日本を中心とする外国の投融資がどのように変容され、産業構造の近代化に照応した金融システケをつくりあげているかに関する実証的分析であった。第二のポイントは、ボ-ダ-レス経済(経済のアジア化)が進むなかで、アジア地域の物流と金融のシステムが再編されるプロセスを追跡することである。 第一、第二の点は別紙論文にまとめ、すでに公表した。その中で、輸出指向型産業を導入しつつ国民経済建設をすすめようとしているアジア(とりわけアセアン)諸国の政策展開が、自立的金融市場の育成とも結びついていること、また「国民経済」的発展を伴いつつアジア地域における国際的金融と物流のシステムが形成されつつあることを解明できた。 以上の分析を通じて今日われわれの政策的課題となっているアジア太平洋経済圏構想が現実的基盤をもっているかどうか、一定の方向づけをすることができた(Kyushu University Research Paper, No.14を参照)
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