研究概要 |
本研究は, 熊本県域における労働力の需給構造と流動状況を明らかにして, 県労働市場構造の問題点を抽出し, シミュレーション分析により労働力の適正配置を計測するものであるが, 本研究の研究実績をまとめると, 1.本研究は, 膨大なデータの収集と地域労働市場の理論モデルの構築を不可欠とすることから, その前段的作業として, まず大都市圏と本県との地域間人口移動の変化をデータのうえで確認し, また所得格差との相関性を分析した. そして, 県人口の流出が東京大都市圏よりも阪神大都市圏との相関が強いものの, 次第に相関性が弱まっていることを検証した. 2.地域労働市場を生活圏単位で捉えるのが本研究の特徴であるが, この生活圏の設定にあたっては, 地理的条件・人口分布・通勤通学状況・交通体系・企業集積等を考慮して, 県域を6つの生活圏に分割設定した. この生活圏別にみた労働市場内部の構造と生活圏相互の人口・労働力流動状況を各種の統計データによって明らかにするとともに, とくに県人口の4割強を占める熊本都市圏への人口・労働力集中を説明する決定要因を現在分析している段階である. 3.この統計的作業に併行して, 経済学・人口学・社会学から展開されている各種の移動モデルを文献展望して, 現在, 地域間移動の理論モデルを構築しているが, 各パラメーターの変化が労働移動・市場構造に与える効果の分析や実証分析のための計量モデルの検討には至っていない. 4.今後, 理論モデルを完成し, それの計量モデルへの変換を行って, 本研究の狙いであるシミュレーション分析による労働力の適正配置を計測する予定で, 本研究を引き続き進める計画である.
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