研究概要 |
韓国, 台湾をはじめとする新興工業国の急速な経済成長が大きな注目を集める中で, ラテン・アメリカ中進国のつまづきに見られるように, その技術的脆弱さが露呈されている. 成長すればするほど機械や中間財の輸入増加がその圧力となることは, 相対的に弱い技術基盤で急激な重化学工業化を目ざそうとする場合必ず起ることで, 今世紀前半の日本の状況もそうであった. 中国が「いわゆる『後発性の利益』と中進国の技術的追いつき過程」で明示した研究の課題と方法は, 大学院生を含む研究会を積み重ねる中で, 発展的かつ具体的に検証されつつある. 我々が目ざしているのは, これまでに研究のない機械工業に焦点をしぼった日本と発展途上国とにおける技術形成過程の比較である. 中国は新たに"On Techmological Leaps of japen as a Develsping Coumiry,1900-1940"を発表し, 問題の所在をより明確にした. また日本を発展途上国としてみる中国の議論に対応して, 金は韓国の学者として「周辺部の技術二重ギャップ」論のあと, 「アジア新工業化の政治経済学」, そして「アジア経済論の再構築」として, 「第四世代工業化論」, 「二重構造の新しい展開形態」, 「韓国と台湾にみる連続性と断続性」, 「アジア経済分析の新しい枠組」を発表し, 我々の研究に大きな刺激を与えながら, 自身のアジア新興工業国論, アジア経済論を集約しようとしている. 個別研究としては, 中国が日本の造船業, 金が韓国の自動車産業, 塩澤が日韓の産業機械, そして西沢が技術教育について研究を進めた. 塩澤は「機械化と労働雇用」を発表し, 西沢も実業教育に関する論稿を発表した. さらに内燃機関, 工作機械, 農業機械あるいは機械貿易について, 研究グループ内で相当に進んだ研究が行なわれ, グループ内の一人は単行本をまとめ, 別の二人は論文を発表予定である. 加えて, 研究充実のため2回にわたり講師を招いて研究討論会を行なった.
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