本研究は、航空輸送における規制政策の展開と産業組織をとりあげ、それぞれの側面およびそれらの相己関係について理論と実証の両面から分析を行なおうとするものである。今年度は、前年度に検討を行なったが未だ未消化である理論的分析を補足し、それを取りまとめるとともに、規制統制下での産業動態の分析で精緻化させるように努めた。だが、本年度において主として取り組んだのは、日米の航空輸送を対象とした規制緩和下での政策展開と産業組織についての実証的分析である。理論的分析では伝統的な自然独占論と規制緩和の理論的支柱となったコンテスタブル・マ-ケット(競合可能市場)り理論を最も典型的な理論としてとりあげ、後者の理論について、とりわけ、伝統的な産業組織論との関連、理論の枠組みと主要な柱についての検討を行ない、前提となる条件の制約や市場分析の評価に照らしての問題点などを指摘した。実証的分析では、日米の航空輸送を対象に、規制展開のパタ-ンと産業組織との関係について様々な指標を用いて検討を行なった結果、我が国では市場調整と事業分野調整に規制統制の特徴がみられ、これが市場構造に大きな影響を与えていることが分った。規制緩和の実証分析では市場構造、市場行動、市場成果などを含めた航空産業の動的分析を行なった。これによって、規制、規制緩和政策の展開と市場構造をめぐっての日米間での相違点と類似点、我が国の規制緩和が漸進的で有形無形の規制体系を残存させ、行政裁量の余地を残している点などが明らかになった。また、新たな競争局面での情報システムの進展、路線構造とネットワ-クなど個々の分析にも重点をおき、規制緩和と競争可能性の条件と制約条件などについての検討を行なった。さらに本研究の一環として、競争制約としての空港問題をとりあげ、国際比較を交じえつつ取りまとめを行ない、我が国の空港整備制度が固有の問題点と課態を明らかにした。
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