昭和62〜63両年度にわたって標記課題について研究した成果の概要は次の如くである。 (1)19世紀末〜20世紀初頭は、従来の間接税中心主義から直接税中心主義に転換ある画期であること。 (2)この転換にさいして、保守党は「課税ベースの拡大」をスローガンとして間接税中心主義を維持しようとしたのに対し、自由党は直接税中心主義とその差別化。累進化を志向したこと。 (3)具体的な租税政策において、とりわけ重要なのは所得税、相続税の他に酒類販売免許税、土地増加税であり、それらは何れも1909年の人民予算において論争の対象となっている。それら諸税について、論争の決着したところを簡単にまとめれば下記の如くである。 <1>所得税は1907年に差別制が、1910年に超過税という形での累進性が実現されたが、それらは何れもイギリス固有の源泉徴収制を大きく変化せしめた。 <2>相続税については、1907年、1910年、1914年に累進制が強化された。 <3>免許税には、都市人口と販売高とを勘案した一種の累進性が導入された。 <4>それらに対して、土地増価税は土地評価の困難のゆえに失敗した。 (4)以上の如く、イギリス財政は20世紀初頭に、統一党政権下における若干の間接税の引上、再設にもかかわらず、概して累進化された直接税収入によって第一次大戦の戦費をまかなうことになったのである。
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