本研究は、両大戦間期の日本の産業企業の資金調達と投資行動の特質と、その時期的な変化を明らかにすることを目的としている。そのために、研究の第1年度にあたる62年度には、各社営業報告書類の収集整理を主として実施し、国内機関の収集状況を確認したが、東京大学経済学部が日本工業惧楽部から寄贈を受けていた営業報告書類の整理を行なうことが、資料の欠落等を補ううえで決定的に重要と判断されたため、所属機関の協力を得て、本格的な整理作業の集中することとなった。63年度には、東京大学経済学部が「商業文庫」として独自に収集していた営業報告書のジョイントリストを作成し、また、寄贈資料のうちの戦後分についても整理をほぼ完了した。このリストによって、(1)第1次大戦中のブ-ム期に創設され、短期に消滅した企業群、(2)太平洋戦争期の統制関連の企業群、(3)戦後、有価証券報告書が公表されるまでの昭和20〜24年の企業の財務デ-タなど、これまで資料の得にくかった企業の営業状況を新たに知ることができるようになった。このリストは、パ-ソナルコンピュ-タ用のデ-タベ-スとして公開されており、また、平成元年度末には東京大学経済学部図書館から冊子体の目録として刊行されるほか、平成2年度中には東京大学が全学で実施しているオンライン検索システム・オ-パックの特定目録としても登録される予定である。また、平成元年度には、研究性かの1つとして、生命保険会社の資産運用を中心に論文を作成したほか、東京大学社会科学研究所助手粕谷誠と共同論文を執筆した。これらの成果は近く公表される予定である。また、引きつづき、損害保険会社、信託会社についても、同様の研究を執筆中である。以上の成果を生して、今後さらに、財閥本社の投資行動を中心に新しい研究課題に取り組んでいきたいと考えている。
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