研究概要 |
1.ヨ-ロッパ学界では最近4中世紀に、古銭学の発達を主たる要因として、西欧中世喫期貨幣史に関する巨大な知見が、蓄積されている。 2.文献史料での貨幣併用の言及は、散在性がきわめて高く、しかも貨幣額の指摘にとどまっていることが多く、個人的能力による処理では、ここから有用な知見を得ることは困難である。 3.ヨ-ロッパ学界では、ヂナリウス貨による銀本位利の歴史的意味を、以下のような事実を検出することによって、積極的に評価する方向が強まっている。(1)その年代幅に8風紀が含まれる。(2)イギリス、フリ-スラント,イタリアなどでも早くからデナリウス貨との関係が強かった。(3)デナリウス貨の造幣量→流通量はきわめて大きかった。(4)デナリウス貨が富の貯蔵手段としての機能も果した。(5)造幣権者による貨幣高権の有効な行使が行なわれた。(6)造幣権者の貨幣政策によって多様な銀内容のデナリウス貨の併用が可能であった。(7)貨幣代替手段の使用は限られたいた。 4.民衆による貨幣使用の日常的具体相は、ヨ-ロッパ学界の豊富な成果をもってしても、明らかになっていない。 5.デナリウス貨は銀内容に担保された金居貨幣であるが、造幣権力による填作の容易な対象であり、貨幣固定説の妥当する性格も示す。 6.デナリウス貨は金目的貨幣である。経済人類学の貨幣についての諸概念を、西欧中世貨幣史に直接に持ち込むのは危険である。 7.経済史と貨幣史との従来の一般的叙述では、西欧中世初期の銀本位利が過小評価されている。
|