研究概要 |
基礎的作業として, オリジナル資料の調査・収集を行なった. 当該年度の調査対象は, 1.国立国会図書館, 2.対馬歴史民俗資料館に保管されている宗家記録であり, 方法はマイクロフィルム撮影と一部筆記によった. 収集資料は和館館守の日記, 裁判(外交交渉官)記録, 貿易帳簿類, 貿易覚書, 勘定方記録, 商人記録, 藩役人関係記録などである. これらをリーダープリンターで焼付け, 項目別にファイルにまとめて整理作業を行なった. 作業は, まず古文書を解読, 必要とされるデータを抽出した. 具体的内容は 1.貿易帳簿類, 覚書などにより, 輸出入品目・価格・数量についての時系列データを作成, これによって日朝貿易の全盛期にあたる17世紀〜18世紀の基礎的数値を得る. 2.和館記録によって, 船舶の出入港及び和館への日本人渡航の実態を把握する. 3.役人, 商人関係の記録により, 貿易業務従事者の人名リストを作成する. 4.その他, 輸出入品の調達, 販売, 輸送ルートの実態を把握する. 以上の四点に要約されるが, このうち2.3.については, 正徳元年(1711)から5年間をモデルに, 周辺の記録類とも併行して観察している. なお, 上記資料調査・収集の段階において, 対馬島内における現存資料の予備調査も併せて行ない, 従前判明していた1.杉村家, 2.斎藤家, 3.平山家, 4.醴泉院, 5.大浦家の伝領資料に, 新たに6.洲河家, 7.扇家の資料を追加する必要があることが判明した. これらはいずれも朝鮮貿易関係資料であり, とりわけ6.洲河家文書には, 密貿易関係が多く現存しており, 興味深い日朝貿易の一端を知る手掛りとなるべきものである.
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