研究概要 |
隔月の研究会で, 都市の概念・時代区分論など討議したが, 各国によって時代区分にはずれがあるので, それぞれの国の事情に応じた時代区分とすることにした. また研究課題へのアプローチの方法論も討議したが, さしあたって今年度は, 各自がこの研究課題のなかで, もっとも各自が問題としているテーマを選択することにした. 日本の場合, 近世都市の特質を比較史的に考え, 近世身分制の具現した城下町, あるいは三都における都市政策を, 都市の社会的経済的環境の変化と都市政策との対応関係で把握したほか, 都市の施設, 例えば水道敷設などやその維持管理の町民への負担と住民のシヴィル・ミニマム的発想や負担の公平化への意識, あるいは救貧, 衛生政策なども比較史的に考察した. ドイツ, イギリスの場合, 近世都市の環境行政の特定を行なった. イギリスの社会サーヴィスの提供は, 政治的な要請および責務に基づくものもあってする行財政の効率化と地方公益事業の役割について, その理論と政策を19世紀を対象として考察した. ドイツは近世都市の環境問題, 都市住民の環境意識の変化を考察した. フランスの場合, アンシアン, レジーム期におけるパリ最大のイノサン墓地の移転が都市衛生意識ならびに都市改造計画と密接に関係しつつ実行されたことは既に明らかにしたが, 当該期のパリ改造計画をよい広い範囲にわたって考察し, 他都市に関する事例も「公衆衛生思想」に焦点を合せて分析した. これらの比較において, 各国の特質が次第に浮き彫りされ, 当研究課題の論点が明らかとなり, 来年度はその成果をまとめて, 本学の学術雑誌に掲載することを予定している.
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