研究概要 |
本年度の計画である「地方財政制度と地方財政運営の変遷の類型化」は以下のような形で実施された. 実証分析は, 吉野を中心に, 次の形で行われた. まず, 中央政府および各県からなる公共部門の資金および財・サービスの循環を, クロスセクションおよび時系列によって分類し, 地域的な類型化, およびその変遷を分析した. 特に, 中央政府から各県への交付税および補助金の影響について分析を行い, 各県ごとの影響を分析した. 次に, 民間部門については, 地方銀行に焦点を当て, その影響を, クロスセクションおよび時系列的に解析した. これらの分析により, 高度成長期, オイルショック以降, および近年の資金循環の変遷を地域的に類型化することができた. 尚, これらの分析に必要なデータについては, 科学研究費によって, 資料購入, および学生アルバイトによるデータ入力が行われたことを付記てしておく. 理論的側面に関しては, 榊原を中心に次の形で分析が行われた. 初めに, 地方財政において枢要な役割を果たす「地方交付税」および「国庫補助金」の役割を, 数種類の価値基準に基づいて, 静学モデルによって分析した. さらに, 異常点間の資源配分という観点から, 地方債にたいする中央政府による起債制限に関する分析を動学モデルを用いて行った. また, 地方財政運営の具体例として, 近年問題となっている宅地政策を取り上げ, 税および宅地供給の効果を, 動学モデルによって分析した. これらの分析により, 現状の地方財政および運営のいくつかの問題点, 特に, 従来は記述的にのみ指摘されていた問題点を, モデルによって示し得たことは興味深いことである. 以上に示された本年度の分析結果は, この研究分野において, いくつかの点で興味深いものであり, 来年度以降の研究の出発点として, 十分に耐え得るものであると考えられる.
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