1.地域所得の平等化と金利自由化(理論的分析) 地域格差是正のために種々の政策手段が使われている。昭和62年度の研究においては、公共投資の47都道府県への配分を、産業基盤、生活基盤、農林水産、国土保全の4つに分けてクロスセクション分析を行った。昭和63年度においては、政策金融による地域所得の平準化の効果を理論的に一般均衡モデルを用いて調べてみた。 (1)政策金融による地域格差の是正 県民所得の高い県から財政投融資の貸出を減らして、県民所得の低い県へ回す政策を考える。財投の貸出が増加した県民所得の低い県では、貸出供給が増えるために金利は低下する。これにより民間企業の投資が刺激され、県民所得を上昇させる効果が期待され、県民所得の平準化がうながされる。 (2)金利自由化による地域格差是正の困難性 金利自由化が進展し、地銀などの民間金融機関が利潤極大化をより強く押し進めると想定する。政策金融による貸出が増加し、貸出金利の低下した県の地銀は、その県への貸出を逆に減らして、インターバンク市場や債券市場での運用を増加させる。このため、せっかく政策金融によって低くなった金利も、民間資金の他県への移動により相殺されてしまう。このように政策金融の地域平準化の目的は、金利自由化と銀行による利潤極大化行動のもとでは、無力化してしまう。 2.地域への資金配分 全国銀行の貸出残高シェアは、昭和40〜62年のデータでは、東京都と大阪府で60%程度の高い比率を占めている。これに対して、政府系金融機関、とくに、中小公庫・住宅公庫などは地方への配分も多くなっており、これまでは地域格差を安らげる方向になっていた。
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