研究概要 |
本年度のインタヴュー調査を軸に, 次年度の理論モデル構築の準備作業を行った. 主要な成果は以下のとうりである. (1)証券的仲介と銀行的仲介については, (a)取引の仕組みの差異, (b)仲介によって産出される, 間接証券や債権・債務のreturn structureによる差異, 及び(c)仲介者の機能, 特に本源的な資金需要者と供給者の間で受発信される情報の内容及び処理における差異, の三点が特に重要であることがわかった. (a)〜(c)はそれぞれ, 仲介取引における競争, 協調のあり方, 取引される証券の内容, そして仲介がもたらす情報伝播の仕組みと内容, という三つのヨリ具体的な側面から分析されることになる. (2)他方, 二つの仲介を全体として金融市場として理論モデルを構築する場合, 従来強調されてきた, 二つの仲介機能の代替性, 競合性に代わって, これらの補完性, 協働性が重要な視点であることがわかった. それは本源的な資金需要者の異質な選好に応じるという意味で様々なメニューを提示する機能を持つ反面, 法制上の規制措置や税制の網の目をくぐるような裁定行動のためのルートとして考える視点も重要である. 国内銀行仲介, 国内証券仲介, ユーロ市場の三者の関係もこのような枠組でとらえることになろう. (3)金融市場は表面的には複雑なシステムを持ち, 日進月歩の勢いで新しい証券が生まれているが, その基本的原理は芥くまで裁定行動である. 裁定行動は, これまで銀行仲介が行って来た仲介機能を換骨奪胎し, 部分的な仲介, 裁定のための証券発行, 仲介のメニューを組合せることにより, 全体として安価で, 銀行仲介と同様のサーヴィスが供給出来るようにする方向へ日本の金融市場を動かしているものと考えられる.
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