研究概要 |
第1段階ではドイツ語圏における経営組織論の発展の軌跡を英米からの影響を特に意識せずドイツ語文献のみを忠実にトレースした. その理由はドイツ語圏における組織理論の特質を抽出し, そこから英米とのつながりを明らかにするためであった. その際ドイツ語圏における組織理論の組織概念, 組織研究対象, 組織次元が史的発展過程のなかでどのように把握され, 変遷したかを分析した. その結果ドイツ語圏では2つの組織概念が存在し, 1つは道具的概念であり, もう1つは制度的概念であった. 前者は経営経済志向的組織研究者により用いられ, 後者は社会学的・心理学(社会心理学)的・行動理論志向的研究者により用いられていることが分かった. また組織研究対象は概ね職分, 制約条件, 組織規則, 職分遂行過程, 効率に求められ, その際例えば職分は構造構築的な要素からシステム構築的要素へと変化している. 制約条件としての組織的影響要因の場合, 条件・状況適応型の組織研究が中心になっている. 職分遂行過程は職分が人的行為主体だけでなく機械的行為主体をも通じて遂行されるようになり, そのためとりわけ情報処理過程の重要性と動態的な問題解決法が主要な研究対象になっている. 効率については効率基準と指標の設定に始まり両者の取り扱い方法に主な研究関心が向っている. また組織的次元は, 分業・調整・相対的配置関係(構成)として捉えられるがこれらは以前は組織規則の記述特性として見られていたが近年は組織形成のための行為パラメータとして見られるようになった. 本年度の研究からドイツ圏の経営組織研究が実用主義的なものから説明的なものを経て実践論的方向へ向いつつあることが把握された. 第2段階では英米の経営組織理論がドイツ語圏のそれのどの部分(組織概念, 組織対象, 組織次元)にどの程度, またいつ頃, どのような形で影響を及ぼし, 浸透度はどうであったかを研究してみることにしたい.
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