本年度の研究課題は米英経営組織論がドイツ語圏のそれに対してどのように影響を与えたかを知るため先ず米英組織論の史的発展の軌跡を追ってみることであった。その結果、以下の知見を得た。 (1)1950年までの発展は3つの基本的潮流に区分される。第一の潮流は化学的管理法及び古典的管理論を中心とする経営管理志向的組織論の流れであり、第二は人間関係論的組織論の流れである。第三は古典的官僚志向組織論の流れであった。その際、科学的管理法及び古典的管理論志向の組織論は、その後の近代的管理論志向の組織論を生み出す礎石となった。又、人間関係論アプローチは多くの行動科学的組織論を惹起し、他方、古典的官僚制アプローチは組織構造の経験的研究に貢献した数多くの研究の出発点となった。 (2)1950〜1970年頃までの経営組織論は記述的意思決定論、経済理論及び組織論として発現し、発展した。 (3)1970年以降の経営組織論はほぼ2つの傾向を示している。一つの傾向は前記(1)の3つの潮流がそれぞれ引き継がれ精緻化又は拡大された。科学的管理法志向の組織論は経営工学志向のそれへ、古典的管理論志向の組織論は新しい管理モデル、多元的組織形態、組織構造の選択原理、組織形成の合目的進め方などを志向するそれへ、人間関係論的アプローチは組織における人間行動に関する仮説の精緻化、動機づけ、紛争、組織開発、チーム統合などを志向する組織論に発展した。組織社会学的官僚制学説も修正された形でいくつかの注目すべき研究を生んでいる。もしこれらは独自の問題解決手掛かりを与えるものではなく、むしろ他の諸アプローチとの関連において有意性をもつものとされる。
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