研究概要 |
本研究の第一の課題である「アメリカの石油政策と, それが西ヨーロッパ石油化学工業の形成・発展に与えた影響の分析」については, その最も基礎的な部分をなすアメリカの石油政策に関する研究を, 具体的には「アメリカ石油輸入規制の成立過程の分析」として, 主にアメリカ議会資料を基礎に進めてきた. その過程で, アメリカの石油政策を, 次の三点において位置づけ直す必要性の認識を一層深めるに至った. すなわち, (1)石炭・天然ガス等の他のエネルギーとの関連にのいて, エネルギー政策全般の中で位置づけ直す必要性, (2)アメリカ対外政策全般の中で, とくに対中東・対西欧政策との関連において位置づけ直す必要性, (3)石油輸入規制派が1950年代における保護主義抬頭の中心勢力であったことから, アメリカ通商政策との関連において位置づけ直す必要性, である. 本研究を進める過程で新たに得られた知見としては, 上述のアメリカの石油政策についての認識を深めることが出来たということとともに, とくに次の二点を指摘しておきたい. (1)1950年代のアメリカにおいても西ドイツや日本に歴史的に先行する形で「石炭危機」といえる事態を確認することが出来た. (2)西ヨーロッパにおける石炭から石油への「エネルギー革命」-西ヨーロッパにおける石油化学工業成立の基礎となる-と, アメリカにおける石油輸入規制の成立過程との歴史的関連についての認識を深めることが出来た. 以上の成果をもとに, 来年度の早い時期に, 論文等の形での研究発表を計画している. 今後は, 本研究の対象とする時期・地域・産業(企業)がきわめて膨大なものとなっていることから, これらの資料をパソコン等を利用して「データベース」化することによって, 研究全体の飛躍的進展を図ることに重点をおいて研究を進める.
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