1.実態調査にもとづいて構築したエキスパート・システム開発の変革過程モデルを検討した。専門家あるいは専門知識に関する組織のコーディフィケーションに注目した。その結果、変革過程におけるコーディフィケーションの解明には、組織の日常的な意思決定状況におけるコーディフィケーションを解明することのできる方法の開発が必要であるとの結論に達した。 2.日常的な意思決定状況に関するコーディフィケーションのモデルとして、組織における自己生成的連鎖モデルを構築し、検討した。このモデルは、自己生成的なシステムと他者生成的なシステムとの対比によって特徴づけられる。このモデルの性質を実証するため、管理者行動と部下の反応の連鎖に関する実態調査結果にモデルを適用した。この結果、モデルによって、多重なループの抽出が可能であることが分かった。 3.自己生成的連鎖モデルは、自己組織的な性質を備えた連鎖である。この性質を備えた類似するモデルとして、相関マトリックス型連想記憶の神経回路のモデルがある。このモデルの性質については、今後も検討を続ける。 4.変革過程モデルは、Unfreezing-Changing-Refreezingという3つのフェイズからなる。各フェイズを記述する要因にもとづいて構築したパス・モデルは、組織内部の学習機構の表現である。この表現は、フェイズ間の連結によってプロセスを表現するという点で、バックプロパゲーション・アルゴリズムによる神経回路網の学習モデルと類似性がある。このモデルの性質については、今後も検討を続ける。 5.これらのモデルは、知的分散処理系に関する基本的な性質を備えており、自己組織的に革新活動を行なっている組織のモデルとして有望であると考えられる。このような組織における自己組織化のモデルの開発を志向した展開を図る予定である。
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