昭和62年度以来、文部省の科学研究費を受けて取り組んできた、この実証的研究は平成2年3月をもって、一応の成果を修めることができた。 ただし、問題の性格上、細部にわたる分析、コメントについては後日発刊予定の著書にゆだねざるをえない。 当初の計画どおり、調査はわが国の一道二十四県において実施することができたが、回収したアンケートは611件に終わった。それは、予定件数の48.8%にすぎないが、現地で行った聞き取り調査によって、若干、補足することができた。 調査は、企業・経営者の概況、経営理念と実践との相関、人事管理および企業の社会的責任についてであり、おおよそ、それぞれの実態を把えることができた。すなわち、わが国のローカル企業は総じて、その体質が脆弱であり、経営上の放漫性が強く、相対的に主体性に欠ていることが検証された。 また、本テーマの主要な狙いである経営理念については、その現実的機能性に欠け、形式的な掲示にすぎず、経営理念の解釈においても一致点がみられないばかりか、その漫透度や経営者の役割意識においても地域差のあることが明らかにされた。 地方の活性化や国際化の主役はそれぞれの地域に特徴的な文化や資源との関連におけるローカル企業、就中その主体となる経営者にあるという視点に立って、経営者の抱懐もしくは表明する理念が基軸になることは言うまでもない。 未開拓のままにあるローカル企業の経営者に、新たな役割意識をもたらし、独自の経営ノウハウを探求せしめる視点からしても、ローカル企業経営に関する理論的、体系的研究は今日的な重要課題である。 わが国が担うべき国際的な役割が都市型の大規模企業や中央政府のみに帰するべき問題ではないという点も再認識された。更なる研究が要請されている。
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