本研究の主目的は、会計監査実施業務における統計的手法の実務的応用の可能性を探求し、コンピュータを用いて監査実務に利用可能な統計的手法による監査システムのプログラムの開発、および、当該監査システムの有効性の検証を行うことである。本年度においては上記目的から1.統計的手法の監査実務への適用可能性についてその内容を再考し、2.適用可能領域に関する監査システムの構築とコンピュータによる3のプログラミングを完成するとともに、3.不適用領域についてアナリティカル・レビュー等の新しい監査技術の利用可能性を探究し、さらに4.監査報告書の在り方を検討することを研究課題とした。 今年度に得られた新たな知見、成果は上記について次の通りである。 1.統計的手法の監査実務への適用可能性について、内外の文献研究による検討の結果、人工知能やエキスーパート・システムの発達により、監査におけるコンピュータ利用の領域が拡大し、その水準が高まりつつあることが再確認された。たとえば、米国では、EDP監査の支援、内部統制の評価、不良債権の評価、重要性の判断といった監査領域に対して、知識ベースのエキスパート・システムの開発が進行中である。しかし、この例からも明らかなように、統計的手法の適用は監査業務の一部に限定されており、その全体への適用には至っていないのが現状である。 2.かかる研究成果を鑑み、統計的手法の適用可能領域の一つであると考えられる、不良債権の評価に関して、その評価システムをほぼ完成した。その基本的な考え方についてはすでに成果を論文にまとめているが、システム自体の内容については現在論文作成中である。 3.新しい監査技術についての検討は、その成果を前年度に引続き論文で公表しているので、それを参照されたい。 4.監査報告書の情報メディア機能検討資料の収集を継続中である。
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