研究概要 |
1 昭和62年3月決算の東証一部上場会社を中心に, 「有価証券報告書総覧」に基づいて, 昭和62年2月改正の大蔵省令による資金収支表を調査分析した結果, 次の成果を得た. (1)改正大蔵省令および企業会計審議会第一部小委員会の「中間報告」において, 資金収支表の目的が明確にされていないため, 伝統的な資金繰表的にと, 実際の資金フローを表示する, 二通りの資金収支表が見出された. これはとくに, 割引手形の処理表示が多様であることにみられる. (2)経団連・総理懇談会の指示のため, 電力会社を除いて, 「中間報告」の様式および科目名を用いている資金収支表がほとんどで, 科目名の開示に問題がある. (3)資金収支表では, 資金に市場性ある一時所有の有価証券を含めたため, 投資有価証券から有価証券への振替や有価証券評価損のように, 資金の収支を伴わない資金の変動があり, 資金収支表ではなく資金変動表とすべきであり, 資金概念を再考する必要がある. (4)資金収支表では, 資金収支を事業活動と資金調達活動に二区分表示しているが, これを営業活動, 投資活動, および資金調達活動の三区分に表示したほうが, 資金収支の構成要素と相互間の関係が明らかになり, 資金収支の実態が明らかになる. 昭和63年度ではこの分析を63年度について行う. (5)資金収支表には, 資金収支を伴わないが財政状態に影響を与える活動を注記か明細表において明らかにすると, 資金収支と財政状態の変動の関係が明らかになり, 望ましい. この分析を昭和63年度についても行う. 2 わが国における資金会計の発展の研究 昭和28〜昭和37年の間の資金計算書の理論の発展を中心に考察し, 資金会計に対する認識の違いを明らかにした.
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