研究概要 |
1.本年度の研究テーマのひとつは, ある特定の分布Gの尺度混合によって得られる分布Fの漸近展開に係わるものである. 展開式の導出と, 展開を有限の項で打ちきったときの誤差の評価が一貫して問われてきた課題であったが, 予想に反して複数の自然な展開式が得られた. これらはある意味で同等なものであるが, 分布の近似という意味では微妙な違いがあり, その意味付けは未だ明らかになっていない. 多変量の場合は表現が複雑化するための困難がつきまとう. 比較的一変量に近いケースについて若干の結果を得た. 2.数式処理システムを利用して各種統計量の分布の漸近展開式を導出し, さらに, これらを近似の道具として利用するために収束速度を著しく向上させる方法を開発し, 理論的・実際的な側面からの有効性を確めた. さらに, 標本に対して対称性をもつ統計量のモーメントを求めるアルゴリズムなど, 数式処理システムの有効利用のためのアルゴリズムを開発した. 3.尺度共変推定量の一般形を与え, 例として逆ガウス分布, 正規分布-いずれも変動系数既知-の場合の平均値の推定量を与えた. nが十分に大きいときの推定量の性質やMLEとの関係等を論じた. 4.経験分布関数の汎関数としての統計量の漸近分布に関する研究を行い, いくつかの新しい結果を得た.
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