1.クェ-サ-、電波銀河など活動的銀河において大質量ブラック・ホ-ル近傍に形成される電磁流体の力学的性質を調べた。ブラック・ホ-ルの重力ポテンシャルエネルギ-及び回転エネルギ-はブラック・ホ-ル近傍程大きいので、これらのエネルギ-の解放にとって事象地平面での境界条件が重要となる。カ-・ブラック・ホ-ルに自由落下するブラズマに凍結した磁場の時間変化に関する厳密解を求め、この解を用いて事象地平面での電磁場の性質を調べた。ブラック・ホ-ルの回転方向への慣性系の引きずりのため、磁場は曲げられ、事象地平面は磁力線が強く巻き付いた状態となる。このとき磁場は事象地平面近傍のプラズマに強いトルクを及ぼし、ブラック・ホ-ルの回転エネルギ-をプラズマに伝達する媒体としての役割を果たす。事象地平面近傍でプラズマの運動エネルギ-と磁場のエネルギ-が平衡状態にあるとすれば、ブラック・ホ-ルの回転エネルギ-の減少率は活動的銀河で観測されるエネルギ-発生率と同等となることが分かった。 2.ブラック・ホ-ルの回転による時空の微分回転または、プラズマ運動の微分回転により発生した磁気流体波がブラック・ホ-ル近傍のエネルギ-を遠方に運ぶことから、ブラック・ホ-ルから解放されたエネルギ-の発現形態を解明するため、ブラック・ホ-ル近傍での波動の伝幡特性を調べた。まず、標準的な厚い降着円盤内での音波の伝幡特性を調べた。波の波長が系の長さに比べ小さい場合には、波の伝幡はWKG近似により、正準形式にかけ、音波の運動を決める「音波計量」が定義できる。この計量によるとブラック・ホ-ルに落ち込む流体内または、降着円盤内では、音波にとってのエルゴ-層は現れるが、音波にとっての事象の地平面は存在しないことが分かった。
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