研究概要 |
太陽フレアはコロナ磁場のフリーエネルギーが急激に解放される過程であり, 大量の高エネルギー粒子を作り出す. マイクロ波, 硬X線などはこのフレア粒子からの放射であるから, これらの放射域を観測することによってフレア中での粒子加速の現場の磁場形状や粒子加速のメカニズムを知ることができる. 本研究では, 太陽の背面で起こり, したがって放射域が部分的に隠されているフレアからの電波・X線がバーストを観測して, フレア粒子の空間分布, とくに高さ方向の分布を知ることを直接の課題とした. 1.東京天文台野辺山太陽電波観測所において注意深く観測を継続した. あいにく1987年は太陽活動度が予想より低く少数の電波バーストしか観測できなかったものの, 太陽背面フレアに起因すると推測されるものが2〜3個あるので, 関連する海外のデータを収集中である. 2.1978年以降の観測データをサーベイしたところ, 間違いなく太陽背面フレアに起因する電波バーストが約20個見つかった. これらにつき, 関連研究者にリストを配布し, とくにX線データについては米国のSMM衛星, ISEE-3衛星のX線・ガンマ線検出器グループと連絡をとって関連するデータを入手しつつある. 3.とくに大きな電波・X線バーストを引き起こした1984年5月21日の太陽背面フレアについては, 解析が終了し論文にまとめつつある. 主要な結論は, (1)インパルシヴ相でのマイクロ波・硬X線はフレア粒子がフレア域を脱出して太陽前面側に降り注いだ結果として発生していること, (2)グラジュアル相のマイクロ波・硬X線はフレア粒子を閉じ込めた磁気ボトルの上昇によって見えてくるらしいこと, である. 4.今後さらに観測・解析を継続する予定である.
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