研究概要 |
原子核-原子核衝突に於いて形成される核子分子軌道が, 原子衝突に於ける電子分子軌道と異る大きな点の一つは散乱の動的効果の大切さであろう. 本年度は, 我々は同種のcore原子核を仮定出来る系, ^<12>C+^<18>C, ^<16>O+^<17>O散乱系を取り上げ, 入射エネルギーがクーロン障壁から, その数倍に至る領域について, 動的効果-(i)核子質量がcore原子核質量に較べ無視出来ない為生ずる反跳効果と(ii)系全体の廻転により生ずるコリオリカの効果-について検討を行った. 我々の核子分子軌道には, これらの効果がくりこまれているので, その評価を直接行う事が可能である. 反跳効果については, 各分子軌道に対応する断熱ポランシャルと分子軌道間のradial coupling相互作用に対しては, 顕著な効果をみる事はなかった. しかし, 断熱ポテンシャル間のpseudo crossing点の位置などが, peripheral領域に於いて, 影響を受けた場合には, その点で引き起こされる遷移-handau-Zener transition-の効果が大きく変化して, 観測量である断面積が反跳効果を強く受ける事を指摘する事が出来る(Contribution to Intn Conf on Frontiers of Heany Ion Physics). この点の系統的研究は現在継続中である. 糸全体の廻転効果-コリオリカ効果-については, その数値的な解析から, 入射エネルギーが低い場合にも, "分子軌道そのもの"が強く影響を受け, この効果を無視しては定性的な議論も成立し得ない可能性がある事を示した(Phys Lett投稿中). 上記の研究は, 西独の実験研究者との共同研究であり, 実験結果を理論解析しながら進めている. 解析には, 我々の原子核研究所の計算機と共に, 西ドイツ・ハーン・マイトナー研究所の計算機を, 国際電々の公衆パケット交換網を通して直接に"real time"で使用し, その共同研究に於ける効果が非常に大きいことを知った. この為に設置されたpersonal compnterによるwork stationは尚も整備を進めている.
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