研究概要 |
核-核散乱過程に於いて、核子が"異る"二ケのcore核(非対称core核系)の周囲に作る分子軌道を調べる為、反応チャンネル結合法により散乱行列、断面積を求め、分子軌道を定義する計算機プログラムを完成させた。このプログラムを用いて二つの系、(i)^<13>C+^<14>C-^<12>C+^<15>C(^<12>C,^<14>C core核)、(ii)^<13>C+^<16>C-^<12>C+^<17>O(^<12>C、^<16>O core核)の弾性、非弾性散乱、核子移行反応の数値解析を、実験データと比較しながら開始した(実験共同研究者の研究ベルリンハーンマイトナ研究所と報告者所属研究所の計算機を使用)。両系に於いて非常に強い反応チャンネル結合効果がみられ、この効果を反映し分子軌道基底状態として"対称core核系"の場合の様に安定な"共有結合状態"が得られる。しかしこの状態は一般には対称core核系とは異り、エネルギー的な孤立状態とはならない為、励起軌道状態への遷移は断熱的というよりは"ランダウ・ツェナー"的に発生する傾向にある('88年国際会議報告)。 昨年に続き分子軌道核子の質量がcore核のそれに比べ無視出来ない為に生ずる反跳効果を、衝突エネルギーが高い場合について検討した。その結果、反跳効果を局所近似によりくり入れた我々の有効相互作用はエネルギーの上昇に際し、断面積角分布、偏極量の振舞いを決定するのに非常に有効な近似であることがわかった(論文執筆中)。 今後我々は上記した非対称core核系核子分子軌道の研究を進展させる。又、現在、実験データ測定中である"重いcore原子核系"について"陽子"分子軌道を考察しそれに対する電場の効果を検討する。又、ランダウ・ツェナー遷移についてその量子論的な振舞い、特徴を知る為(未だ確認されていない)、分子軌道系に対応する"diahatic系"を作る研究を開始した。又、実験値の再現については大切と思われるcore核の集団励起運動を取り入れ、その効果を検討する為の計算機プログラムを作製する。
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