研究概要 |
本研究は原子核の磁気極子モーメントと電気四重極モーメントを測定し, 核の高スピン状態の準粒子配位構造と, 集団運動的構造の研究を目的としている. 今年度は, 1)内部磁場が温度によって異なる稀土類核の磁気モーメン測定と四重極モーメント測定の際に必要となるターゲット温度調節機構を開発製作し, ^<149>Tbの27+/2アイソマーの磁気モーメント測定に適用した. 東京大学原子核研究所SFサイクロトロンからの^<12>Cビームを使用し, ^<141>Pr^<12>C, 4n〓)反応により生成される^<149>Tb核からの崩壊ガンマ線の時間積分型摂動角分布を温度293°-554°Kに亘り測定した. 次に127+/2アイソマーの寿命〓を重心移動法により測定し, 〓=3.8±0.4nsの結果を得た. この両者の測定より^<149>Tb27+/2アイソマーの磁気モーメントはg=0.31±0.03と求められた. これは従来考えられていた9(^<148>Gd+π1h9/z配位から計算される値の約2/3であり, これ以外の配位の混合を必要とする. 詳しい解析を進行中である. 2)四重極モーメン測定に使用する電磁石系を製作し, 強磁性体薄膜(コバルト)と単一光子計測法により, 偏極したS軌道電子捕獲による超強磁場発生機構の研究も行った. これは四重極モーメント符号決定に必要となる動的超強磁場の基礎研究である. 東京工業大学ヴァンデグラフ加速器からの^<15>N, ^<3.4>Heビームを使用した測定では, 薄膜製作(真空燕着), 散乱槽の真空°(10^<-6>mmHg)等の問題点が生じ, 薄膜は巨視的には強磁性体の特徴を示すが, 表面の酸化層がどの程度の深さまでにおよんでいるか不明なこともあり明確な結果は得られなかった. しかしながら炭素及びコバルト薄膜を垂直に使用した場合にも, ^<3.4>HeII, n=4.5状態から放射される光の測定において, 磁場の強さに依存する原子偏極が認められた. これはこれまで未報告の現象であり, 今後この現象を解明する研究も進めてゆく予定である.
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