研究概要 |
この研究の目的は, 次の様な性能をもつ高エネルギー光検出器を開発する事を目的としている. (1)優れたエネルギー分解能(1GeVに於いて2%), (2)優れた位置分解能(△X〜8mm), (3)速い応答速度. これらの性能を有する可能性があるものとして, バリウムフロライド(BaF_2)がある. この結晶は輻射長が2.1cmと短かく, かつ密度も4.88gr/cm^3と高い. 従って高エネルギー光検出器に適している. シンチレーション光は, NaI(Tl)の約20%であり, 2つの成分がある. "slow"と呼ばれる成分は, 波長が310nmで, その発光速度は620nsである. これに対し"fast"と呼ばれる部分は, 波長が220nmであり, 速度は0.6nsである. 我々の目的に対しては, これらのうち"fast"成分のみが有効である. この部分を取り出すために, 光電面にセシウムテルル(CsTe)をもつ光電子増倍管を使い, シンチレーション光を読み出した. 本年度は, 特にバリウムフロライドの小サンプルに^<137>Csからの662KeVγ線を照射し, その基本特性を調べた. その結果は, 以下の通りである. (1)662KeVのγ線のフォトピークに対し, 30%(fwhm)のエネルギー分解能が得られた. (2)時間分解能は, 1MeV以上のγ線に対して, αt〜250psであった. (3)CsTeの光電面を持つ光電子増倍管とバリウムフロライドを組み合せて, "fast"成分を読み出すと, 温度依存性が極めて小さい(≪0.2%/°C)事で判明した. 以上の結果は, このクリスタルが高エネルギー光検出器の製作に, 非常に有益である事を示している. 来年度の目標として, バリウムフロライドとともに, これと同じ様な性質をもつクリスタルとして最近注目されているセシウムアイオダイドについてもテストを行い, その性能を評価したい.
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