αクラスタ模型はsd殻の^<20>Ne付近までの原子核の構造を包括的・統一的に記述し大変成功したが、fp殻の^<44>Tiではαクラスタ模型は多くの困難に直面しもはや基底回転帯を含めての包括的・統一的に記述はむずかしいのではないかと考えられていた。 我々は散乱状態と束縛状態を統一的に記述するという新しい方法論を導入し、^<44>Tiが基底回転帯をも含めてαクラスタ模型により統一的に理解できることを示した。最大のポイントは、従来、αクラスタ模型は閾値付近にαクラスタ状態K=0^-バンドを出すが実験的にはこのような状態は知られてなく、αクラスタ模型がうまくいかない大きい理由として挙げられていたのにたいし、我々は散乱状態と束縛状態を統一的記述からこのK=0^-バンドはむしろ実在すると考えるべきであることを示したことである。我々は^<44>TiのK=0^-バンドを含むαクラスタ状態の分光学的性質を詳細に調べた。又、我々のK=0^-バンドが存在するという予言は有効2体力を用いた微視的模型計算によっても支持された。 このK=0^-バンドが存在するかどうかがここ数年の最大の争点であったが、1989年大阪大学・核物理研究センタ-にて実験的に発見された。こうして、^<44>Tiにおいてもαクラスタ模型の視点が有効であることが理論的・実験的に明らかにされた。 我々は^<40>Caについても同じ視点からαクラスタ構造が成立し、未知のαクラスタ状態K=0^-バンドが閾値付近に存在することを予言した。これは現在実験的に探索が行われている。αクラスタ構造はfp殻においても広く存在し、このK=0^-バンドも広く存在する可能性が明らかにされた。要するに、本研究を通じて原子核の分子的構造研究はfp殻領域へと大きく切りひらかれたのである。
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