1.前年度のテスト実験において測定上の困難として残されていた、運動量分析用磁気スペクトロメータ焦点面位置検出用カウンターにおけるバックグラウンド除去のために一連の作業を行った。バックグラウンドのうちの大きな成分はスペクトロメータ真空槽内壁を衝撃した、測定対象の3重陽子以外の荷電粒子の散乱に起因するものであることが判明した。焦点面カウンターの前方に前置カウンターを設置し、このカウンターと、位置検出用カウンターの後方に配置したEカウンターとの間で飛行時間測定を行うことにより、正規のビームトラジェクトリに沿って位置検出器に入射する3重陽子のみを取出すようにした。前置カウンターとして透過型のプラスチックシンチレータによる検出装置を製作した。シンチレータの厚みは0.5mmおよび1.0mm、高さ30mm長さ400mmとして必要な運動量範囲をカバーした。実験結果は極めて良好に作動することが分かり、S/N比を約30倍ほど改善することができた。これによって、2次粒子として得られた3重陽子弾性散乱ピークを明瞭に観測することができ、^<56>Feを散乱標的として弾性散微分断面積の測定を行った。 2.より高いエネルギー(40ー60MeV)領域の3重陽子を得るためには、^7Li(α、t)^8Be反応が最適である。特に二次粒子を用いた実験で最も問題となる、1次粒子との分離において磁気的あるいは電気的手段によらなくとも物質中での飛程の差を利用して2次粒子のみを分離することができる。いくつかのdegrader物質について得られる3重陽子ビームの運動学的性質についてシミュレーションを行った。その結果弾性散乱実験に必要な程度のクォリティをもつビームが得られることが分った。そしてエネルギーが高い方が諸条件が有利に働くことが分った。
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