研究概要 |
1.原子核の回転-粒子結合模型のスペクトルに対する断続位相の効果に関する数値計算は一応完了し, 準位交差の分布に対する定量的知見が得られた. 現在, この定量的結果をもとに, 定性的結論を検討中である. 2.断熱位相と非可換ゲージ場のカイラル異常の関係について, とくにゲージ交換の生成子に対する異常交換関係(いわゆるFaddeev operator anomaly)がゲージ場に付随する正準構造の変形として確定的に定式化された. また, 断熱位相とChirality indexの間の直接的関係について, 見通しがついた. 3.断熱位相の効果をふくむ準古典(WKB)理論の特筆すべき応用として, 超対称量子力学が帰結することが判明した. ポイントは, 断熱位相がボソンのゼロ点エネルギーを消去する作用をもっているというところにある. この事実は断熱位相の概念が, 予想外に広い適用範囲を有することを示しており場の理論に対する拡張が期待される. 4.ヤーンテラー効果に対する断熱位相の寄与に関して, 多体系への拡張が考えられるが, とくに, 超伝導モデル(BCSハミルトニアン)の場合について, 予備的考察がなされた. それによると, ゲージ空間内でWKB量子化を適用することにより, Cooper対の電荷が"分数化"(fractionalize)するという著しい結果が得られた. 5.断熱位相は文字どおり, 量子過程の断熱性の結果として生ずるものであるが, 最近, 断熱性を仮定しない, より一般的な周期変化に応ずるトポロジー的位相因子が得られることが指摘されている. 実は, これはより広い見地からコヒーレント状態経路積分にあらわれる"正準項"(Canonical=term)に他ならぬことが判明した.
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